単行本が出た当時(2005年だそうである)から読みたいと思っていた「阿片王―満州の夜と霧―」(佐野眞一 著)が文庫化されたので、昨日さっそく購入。読み始めたら止められず、急ぎの仕事がないことをいいことに、ときに箸とページを交互に操りながら一気に読んだ。

推理小説にも似た本書の展開の手法もスリリングだ。著者はいつ幽明界を異にするかしれないような関係者から証言や新しい事実を聞き出し、60年以上も前に遡らなければならない謎や疑問がその時代の背景とともに少しずつ解き明かされていく。

戦前の中国で「阿片王」としてアヘンの密売に暗躍した里見甫、里見の片腕として異彩を放つ「男装の麗人」梅村淳やその母・うた、そして、東條英機、岸信介、甘粕正彦などといったビッグネームとともに彼らのまわりでうごめくまさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちの欲望のまがまがしさにどっぷりとひきこまれてしまった。また、うなるべきはその欲望がもやは昔日の幻などではなく、それは満州や上海でまかれた種が戦後の日本で花開くごとく、この現代にさまざまなかたちとなってつなながっていることである。

どんよりとした雲とじっとりした湿気に物憂さを感じていた僕にはちょいと“クスリ”が効きすぎた。ストーリーに充満する毒気と妖気にすっかりあてられたまま、ぼんやりとした心地が今も続いている。

阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)

佐野 眞一 / 新潮社


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by suiminsha | 2008-08-01 18:03 | 昭和史