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「生は死の対極にあるのではなく、その一部として存在する」(だったかな)

村上春樹『ノルウェイの森』の主人公ワタナベ君が人生に対する1つのテーゼとして掲げた一文である。この物語の中でワタナベ君が読んでいた小説がトーマス・マンの『魔の山』。この『魔の山』を久しぶりに読み返していたら次のような文章があった。

主人公ハンス・カストルプの人生の指南役を自任する、少々おせっかいな人文主義者セテブリーニが主人公に語る。
「エンジニア、どうかお聞きください。どうか心にとめておいていただきたいのですが、死に対して健康で高尚で、そのうえ−−これはとくに申し添えたいことですが−−宗教的でもある唯一の見方とは、死を生の一部分、その付属物、その神聖な条件と考えたり感じたりすることなのです。−−逆に、死を精神的になんらかの形で生から切り離したり、生に対立させ、忌わしくも死と生を対立させるというようなことがあってはならないのです」

ワタナベ君のガールフレンドの直子が療養する「阿美寮」が、ハンス・カストルプやセテブリーニがやはり療養する、高地サナトリウムを彷佛させることは言うまでもないが、この生と死に対する見方についてもつながっているとは気づかなかった。『魔の山』を先に読んだのはもう10数年も前の学生時代で、このときはこの長編をとにかく読み切ること、読書リストに加えることだけが目的であるかのようにそこれこそ一心不乱に読んだものだが、このように今は再読ならではの妙味を味わいながら読んでいる。ときに数週間も中断することがあるぐらいゆっくりと、“予定を立てずに”。
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by suiminsha | 2007-10-27 01:21