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近ごろ、『遠野物語』の世界が気になっている。そこには考えるヒントがたくさんつまっていた。『遠野物語』は単なる民話集ではなかったということを知ったのは、恥ずかしながらつい最近になってのことだったのだけど。

『遠野物語』の遠野は、わがまち釜石のとなりにある。子どもの頃から、「民話のふるさと 遠野」という道路看板を数えきれないぐらい通り過ごしながら、以前にも書いたかもしれないが、“遠野”と『遠野物語』はずっと僕の関心の外にあった世界である。

ついでながら、学生時代にはじめてイギリスを旅行し、古いものを大切にしながら現在とうまく共存させていくかっこよさに魅せられて帰国・帰省のおり、(厳密に言うと遠野ではないが)小峠トンネルを抜けて眼下に遠曾部の小盆地の中に田園が広がるのを見たとき、それが英国で見た緑の丘陵にヒツジが点在する風景と重なり、目の前の流行だけがクールなのではないということを自覚した記憶をここに加えておくのも無駄ではないだろう。

もちろん今も僕の関心は、オシラサマとかザシキワラシの、いわゆる民話的世界ではなく、『遠野物語』のスタイルというか“方法”、あるいは編集術と言えるかもしれない。

『遠野物語』の特色というのは、すべてが断片的で、因果関係を求めたり、そこから理論構築をしたりしようというものではない。あれは「素材集」なのです。――加藤英俊 『遠野物語と21世紀 近代日本への挑戦』

(『遠野物語』は)日本風の静かな抒情と外国風の細かな観察とが錯綜して、読者をして魂の動くのを覚えしめる ――田山花袋 『柳田国男 『産業組合』と『遠野物語』のあいだ』(藤井隆至)より

此物語はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。昨明治四十二年の二月頃より始めて夜分折折訪ね来り此話をせられしを筆記せしなり。鏡石君は話上手には非ざれども誠実なる人なり。自分も亦一字一句をも加減せず感じたるまゝを書きたり。思ふに遠野郷には此類の物語猶数百件あるならん。我々はより多くを聞かんことを切望す。 『遠野物語』(柳田国男) 初版序文より


遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

柳田 国男 / 岩波書店


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