カテゴリ:昭和史( 3 )

10月ですね。わがまち釜石は今日は久々にまとまった雨。

10月はテレビの番組改編の時期。
最近めっきり見なくなったテレビだけど、10月15日(木)から始まるこのドラマはとても楽しみしている。
「不毛地帯」。番組の公式サイトはこちら。

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

山崎 豊子 / 新潮社


不毛地帯 第2巻 (新潮文庫 や 5-41)

山崎 豊子 / 新潮社


不毛地帯 第3巻 (新潮文庫 や 5-42)

山崎 豊子 / 新潮社


不毛地帯 第4巻 (新潮文庫 や 5-43)

山崎 豊子 / 新潮社


不毛地帯 第5巻 (新潮文庫 や 5-44)

山崎 豊子 / 新潮社



元大本営参謀で元伊藤忠商事会長の瀬島龍三がモデルと言われる、山崎豊子原作の小説のテレビドラマ化。主人公の壱岐正を演ずるのは、唐沢寿明。いささかカッコよすぎか。

ドラマを見てはまった方は、こちらを合わせ読んでみるのもお勧めします。秋の夜長、昭和史のまさに不毛地帯をさまよい、原作およびドラマの虚実探索におぼれてみるのも一興かと。

瀬島龍三―参謀の昭和史 (文春文庫)

保阪 正康 / 文藝春秋


沈黙のファイル―「瀬島 龍三」とは何だったのか 新潮文庫

新潮社


幾山河―瀬島龍三回想録

瀬島 龍三 / 産経新聞ニュースサービス


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by suiminsha | 2009-10-02 17:36 | 昭和史
本書は、多くの文人や財界人に愛された銀座のクラブ「らどんな」のママ、瀬尾春(1919-1991)の一代記である。

昨年にこのブログで紹介した『阿片王』(佐野眞一)に次のようなくだりがあったので、満州、上海で活躍した主人公・里見甫に関する記述がこの昭和史の一面を彩るノンフィクションにもあるかなと思い、手にとった次第である。
もう一人、身元が判明した男に石丸清がいる。石丸は世田谷区用賀の高級住宅に住み、銀座のバー「らどんな」の名物ママ、瀬尾春のパトロン兼愛人だった。瀬尾は“上海お春”の異名ををとった上海時代、児玉機関の一員だった石丸と知り合い、戦後再会して男女の仲となった。(中略)「らどんな」でトラブルがあったとき、里見が出て行って揉め事を収めたこともあり、里見は酒も飲めないのに、「らどんな」にはよく行っていたという。(『阿片王』(佐野眞一/新潮文庫))

『阿片王』の著者・佐野眞一氏が里見甫の人となりを取材する中で入手したのが、里見氏の遺児の奨学基金の発起人名簿であり、岸信介、児玉誉士夫、笹川良一、佐藤栄作など大物も名を連ねる、この発起人たちの身元を1人1人洗っていくことが初期取材の大きなテーマの一つであった。引用文にほどなく見える“身元”というのはそういうことである。

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里見甫(1896-1965)

結論から言うと、『銀座らどんな物語』には里見甫の名前は出てこない。しかしながら、瀬尾春が最初の店を持つ際の資金の出所に関するエピソードは『阿片王』の視点から読めば興味あるものだった。

もともと石丸は、児玉機関の「やり手として有名な」機関員であり、昭和20年の終戦の後、瀬尾の日本への引き揚げをアレンジしたのが石丸であった。そのとき、瀬尾は石丸から「バターほどの大きさの木箱を渡され」、日本に持ち帰るよう依頼された。そして日本で再会し、共同生活が始まったのちのある日のこと、石丸は瀬尾がその木箱を無事に預かっていることを知ると、箱の中身がラジウムであることを明かす。そのラジウムを香港で売った代金の一部が開店資金となったのである。

少なくとも朝鮮戦争が始まる昭和25年以前の戦後間もない日本にあって、香港でラジウムをさばいて大金を得る。ていうか、ラジウムを手にできるということ自体、僕をはじめ一般の人には思いもよらないだろう。そんな終戦前の上海で暗躍した人物ならではと言っていいふるまいは、大阪万博の同時代に生まれた僕にはまるで昔の日活映画でも見ているような、いかがわしくも鮮やかに映るのである。戦後はひっそりと暮らしながらも有名人が集う「らどんな」に“よく顔を出した”里見甫、そして里見遺児奨学基金の発起人となった石丸清。2人の戦前・戦中の中国大陸での様子と、戦後も続いたであろうつながりから推察すれば、もしかしたら、このラジウムの取引には里見甫も絡んでいたのかもしれない。そんな想像をたくましくすれば、戦後史のまだまだ闇に埋もれた部分をもっと覗き込んでみたいという好奇心はますます強くなってくるのである。
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by suiminsha | 2009-06-14 17:21 | 昭和史
単行本が出た当時(2005年だそうである)から読みたいと思っていた「阿片王―満州の夜と霧―」(佐野眞一 著)が文庫化されたので、昨日さっそく購入。読み始めたら止められず、急ぎの仕事がないことをいいことに、ときに箸とページを交互に操りながら一気に読んだ。

推理小説にも似た本書の展開の手法もスリリングだ。著者はいつ幽明界を異にするかしれないような関係者から証言や新しい事実を聞き出し、60年以上も前に遡らなければならない謎や疑問がその時代の背景とともに少しずつ解き明かされていく。

戦前の中国で「阿片王」としてアヘンの密売に暗躍した里見甫、里見の片腕として異彩を放つ「男装の麗人」梅村淳やその母・うた、そして、東條英機、岸信介、甘粕正彦などといったビッグネームとともに彼らのまわりでうごめくまさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)たちの欲望のまがまがしさにどっぷりとひきこまれてしまった。また、うなるべきはその欲望がもやは昔日の幻などではなく、それは満州や上海でまかれた種が戦後の日本で花開くごとく、この現代にさまざまなかたちとなってつなながっていることである。

どんよりとした雲とじっとりした湿気に物憂さを感じていた僕にはちょいと“クスリ”が効きすぎた。ストーリーに充満する毒気と妖気にすっかりあてられたまま、ぼんやりとした心地が今も続いている。

阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)

佐野 眞一 / 新潮社


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by suiminsha | 2008-08-01 18:03 | 昭和史