ひとり百年読書会③ 『あ・うん』向田邦子

「百年読書会」6月の本は、向田邦子の『あ・うん』

僕は子供のころから、TBSで放映されていた久世光彦演出の「向田ドラマシリーズ」が大好きだったのだけど、小説としては今回はじめて向田作品を読みました。『あ・うん』は2000年にドラマ化されたようですが未見です。

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「男2+女1」の三角関係に悩んだ経験のある男にとって、正直なところ、この話は心痛い。門倉の気持ちも、水田の気持ちも分かる。どちらにも“肩入れ”が、できない。たみは僕にも魅力的だ。僕はさっぱり成長していないらしい。

そうだ、描写から彼らの心情を推し量るといった “読み解き”は止めよう。そんな読み方は似合わないのかもしれない。本当は水田とたみのなれそめも気になるが、昭和初期という、江戸と東京がまだまだ日常の中で交差していた時代の空気に身を浸そう。それに、ちょっととぼけた味のある初太郎や、直情型だけど人のいい禮子、おおらかな包容力を見せる君子など、どこか和ませてくれる脇役陣も揃っているじゃないか。

中でも、門倉の“三号さん”が発覚したときに“二号”の禮子が発した、まるで江戸落語のような威勢のいい次の一言は痛快だ。
「三軒目のうちが三軒茶屋なんて、
ふざけるのも大抵にしろっていうのよ」
 いよっ、禮子さん!

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あ・うん (文春文庫)

向田 邦子 / 文藝春秋


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